個人事業主に朗報か?個人事業税は払う必要なし!?
8月に入って間もなく、個人事業主(Aさん)と会話していたところ、「そろそろ個人事業税の納税通知書が来ますわ。」とのボヤキ。Aさんは、システムエンジニア(SE)であり、ユーザとの準委任契約により役務提供を行っていることを知っていた筆者は、「なんで払うの?」と聞いてみた。Aさん曰く、毎年8月になると個人事業税の納税通知が県税事務所から送られてきて、言われるままに支払ってきたとのこと。その額も、一般家庭では馬鹿にできないものであるらしい。Aさんは、税理士に相談しつつ確定申告をしてきたようであるが、特に個人事業税については何も指摘を受けていなかったようだ。尚、Aさんは税理士には仕事の内容までは伝えていなかったらしいので、「一度、仕事の内容を伝え、相談して還付申請をしたら?」とアドバイスをしたところ、無事に事が運んだらしく、弾んだ声でお礼の連絡がきた。改めて、「ところで県税事務所から仕事の内容に関するアンケートは来なかったの?」と聞いてみると、「一度も来ていない」という。
こんなやり取りがあり、「もしかして、他の個人事業主も、Aさん同様、払う必要のない個人事業税を払っているのではないか?」と思い、ここで整理したいと考えたところである。
ちなみに、2024年度の事業で、筆者も個人事業税の課税所得が発生してしまい、納税通知書がくるかな?・・・と思っていたところ、県税事務所から事業に関するアンケートが来た。それに郵送で回答し、かつ県税事務所にも電話して課税対象の可能性を聞いたところ、準委任契約でのシステムエンジニアであることを理由に、対象外である可能性が高いとの結果を得た。8月に納税通知書が来なければ、対象外であると認識してくださいとのことであった。尚、Aさんには何故アンケートが来なかったか、その原因については定かではないが、筆者にアンケートが来た理由は、県税事務所にも「開業報告書」を開業時に提出していたためかもしれない。筆者が個人事業税の存在を知ったのは、実は県税事務所へ開業報告書を提出したときであった。開業報告書の提出がなくても、税務署から県税事務所へ確定申告の情報が連携され、個人事業税の納税を通知することができると言う。「納税通知に漏れはなし」という、よくできた仕組みである。
尚、筆者は税務に関する専門家ではないため、記載に誤りがあるかもしれない。よって、本投稿はあくまでも、個人事業税を支払う必要性がない事業があることを知る切っ掛けにしてもらいたい。もし、支払う必要のない個人事業税を納税している可能性がある場合は、専門家たる税理士、県税事務所、税務署等に相談の上、正しく損をしない納税をしてもらえれば幸いである。
さて、前段が長くなったが、以下に個人事業税のあらましについて整理しておく。
1.そもそも個人事業税って何よ?
筆者の事務所がある埼玉県の「個人事業税」に関するサイトによれば、個人事業税の説明は以下となっている。
【個人事業税の説明】
事業を行う場合には、道路など各種の公共施設を利用するなどの公共サービスを受けて います。この税金は、その経費の一部を負担して戴くものです。
うーん、なるほど・・・でも、道路や各種公共施設などの公共サービスの利用は、全県民が該当する。県民は、市民・県民税の形で課税されている。個人事業主も市民・県民税を支払っているので重複課税にならないの?とケチをつけたくなるところもあるが、地方税法で決まっていることなので、そこは大人にならないといけない。笑笑
2.課税対象となる事業と税率
課税対象となる事業の種類と税率は、以下である。70業種という広い範囲の法定業種が個人事業税の対象になっていることが分かる。
3.個人事業税の対象外になる業種
原則、課税対象の事業に該当しなければ良い訳であるが、判断に迷うことは結構多いかと思う。いろいろとネット検索してみると、佐藤綜合会計事務所のサイトが具体的に対象外の事業を上げていてくれたので紹介しておく。
【個人事業税の対象外の事業】
1)林業 2)鉱物採掘業 3)農業 4)国外における事業 5)文筆業
6)画家・漫画家 7)音楽家 8)スポーツ選手 9)芸能人
しかしながら、以下の事業を展開している場合は、個人事業税の対象外と認められたケースはあるものの、県税事務所(課税当局)の担当者によっては、頑なに認めない場合もあるという。
【個人事業税の対象外である可能性が高い事業】
1)SESでのシステムエンジニア
※成果物がある場合は、法定業種の請負業や製造業になる可能性があるため要注意
2)Webライタ
※文筆業のため対象外
3)アフィリエイタ
※広告業を思い浮かべるが、広告業の定義に照らすと広告業ではないため対象外
4)YouTuber
※アフィリエイタ同様、対象外。
※但し、広告主との直接取引を行う場合は要注意
5)SNSを利用したインフルエンサー
※広告業ではないので対象外
※但し、マーケティングに関わるような事業も含むと広告業に該当するため要注意
残念ながら、WebデザイナやHP制作及びSEOについては、前者がデザイン業、後者がコンサルティング業に該当するため、対象外とはならいようだ。但し、事業実施において、依頼主との準委任契約等の契約に基づき、依頼主の指示によるところが大きい場合は、法定業種に該当しないと判断される場合があるようだ。
いずれにしても、自分の事業が法定業種に該当するか否かの判断に迷う場合は、専門家に相談されることが一番かと思う。
4.課税所得の計算式
個人事業税の対象となる課税所得は、以下の計算式で算出する。
課税所得=総収入ー必要経費ー繰越控除ー事業主控除 (式1)
注意する点は、青色申告特別控除は、控除されない点にある。
式1で求めた課税所得に、当該事業に関する税率を乗じると納税額を求めることができる。
事業主控除は、年290万円まで控除できるが、事業を行った月数で月割りした額が事業主控除額になる。具体的な月割り事業主控除額は、以下である。
出典: 埼玉県 個人事業税に関わるサイト
5.個人事業税の対象事業が途中で増えた場合はどうなる?
従来は個人事業税の対象外の事業だけしか実施していなかったところ、事業の多角化で対象事業を実施するようになった場合は、どうなるのだろうか?
この質問に関して、県税事務所の担当者と会話したところ、確定申告の情報を県税事務所では監視しており、従前とは異なる所得の動きが認められるケース等があれば、個人事業主に連絡を取るようである。県税事務所に対象事業が加わったことを知らせる確実な方法は、確定申告の際に対象事業の所得関連の情報をメモ程度でも記載しておくのが良いようだ。県税事務所ではそれを確認するようだ。記載方法については、必要に応じて県税事務所に確認しようかと考えている。専門家が近くにいるのであれば、聞いてみるのも手である。
6.個人事業税の還付申請はどうするか?
支払った個人事業税は、おそらく経費計上しているかと思われる。その場合は、確定申告の更正請求をすれば良いかと考える。更正請求をすれば、税務署から県税事務所に情報が連携され、個人事業の還付を受けることができるかと思う。
以上、いかがでしたでしょうか?税金の仕組みは大変複雑で、一人で税務をやっている個人事業主の方には、理解に苦しむことが多いかと思う。筆者もその一人。支払う必要のなかった税金は、速やかに還付を受け、ハッピーライフを送りたいものである。
ー以上ー
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